[年の差D] 超小ネタ。 久々に、ネフリーから手紙が届いた。 ジェイドがこちらに来てからというもの、すっかりその回数が減っていた彼女からの手紙だったが、仕事の用件で送られてきた書簡に、個人的なものが添えられているのを見て、ピオニーは思わず笑う。 「こういうところは、お前らは似てるんだよなぁ」 「…こういう所、とは?」 「さりげない風を装う所が、だよ」 今回送られてきたこの手紙は、あくまで仕事の用件、との事で預かってきたものらしく、兵はまさかそこに私的な手紙やらが添えられているとは夢にも思わなかったようだった。 そうした真面目なものにあえて添付することで、皆の目を誤魔化したのだ。 普段もケテルブルクの状況を報告する、という名目で写真や近況を教えてくれていたりしたのだが、今回の手紙と質素な包みで無造作にくっついていた『贈り物』は、公的に送るものとしては――――…というより、いかにも有能で生真面目そうな外見のネフリーが送るものとしては、ファンキーな逸品だった。 まぁ、そろそろ必要だな、と思っていたので、その気遣いには大変感謝したい所なのだが。 「見たいか?お前の姉さんからの贈り物」 「……………」 露骨に嫌そうな顔をしたジェイドに、からからと笑いながら手招きをしてみせる。 そうすれば、気を許した人間には案外素直な気性である彼は、渋々ながらも寄ってきてくれるのだ。 そんな愛らしい臣下に、臣下に向けるものとは思えないような表情を向けたかと思うと、ピオニーはおもむろにその包みの中身を見せる。 彼のそんな気味の悪い表情に訝しげな顔をしながら、ジェイドは何事かとその中身を確認し、そして。 「―――――――…なんですか、これ」 意味の分からないものが入っているのを見て、分からないとばかりにピオニーを見上げる。 中に入っていたのは、何かの軟膏のようなものだった。 チューブで、よく分からない単語が書かれていたのだが、果たして洗顔料なのか、歯磨き粉なのか、外見からは判断し難い。 何より、こんなものを貰って何処か嬉しそうなピオニーが理解できなかった。 姉に焦がれていたと専らの噂だったこの男のことだ、彼女からもらえるものならたとえどんな下らない品でも嬉しい、という事なのだろうか。 本気で首を傾げていると、いよいよ耐えられないとばかりにピオニーが吹き出して、声をあげて笑い始めてしまった。 「お前なぁ、本当に分からないのか?―――――ほら、ここ。ここを読んでみろ」 商品名らしい文字の下にぽつんと何かが書いてある箇所を示されて、ジェイドは何の疑いもなくそこへと目を走らせる。 「………恋人との甘い夜の、おとも……に……」 「要するにアレだ。」 と、その品の説明をピオニーが補足しようとした瞬間、ジェイドはまさに茹でたタコのように赤くなったかと思ったら、俯いて押し黙ってしまった。 どうやら、彼は行為中は必死過ぎて、こういう小道具の存在や必要性については分かっていなかったらしい。 その様子が珍しくて、思わず補足説明を中断して顔を覗こうとしたところ、唐突に彼は顔を上げ。 「フレイムバースト!!」 ジェイドの渾身の叫びと共に、炎の大爆発。 程なくして。 扉から漏れ始めた煙やチリチリと舞った火の粉に驚いて飛び込んできた兵が見たものといえば、炭と化した皇帝と、肩で息をしているジェイド、それから黒こげになった書簡だけだった。 +反省+ |